ハラスメント研修企画担当者に読んで欲しいお勧めの1冊
面倒くさい女たち
河合 薫 氏 (中公新書ラクレ)
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を ご卒業後、全日本空輸入社。
気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演なさいました。
「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに講演や執筆活動をされています。
きっと視野が広がる1冊です。
是非、ご一読ください。
内容をご紹介します。
「イケメンに職場活性効果アリ?」とのアンケート調査の記事が公開され、男性たちからいっせいにブーイングが起きたことがありました。
「男性には、これくらい言っても大丈夫」「男性は、こんなことを気にしない」「男性は強くて当たり前」「男性は心が広くて当たり前」・・・。イケメンを美人に置き換えて男性にアンケートしたらセクハラと大バッシングされるのに、なぜか女性には許される現実が、ここに存在するのです。
(中略)
女性の場合には「お茶を入れる」のを求めるだけでセクハラになるのに、男性の場合は「男らしさ」を求める声が「期待」になる。女性であれば「そりゃ。問題だ!」と周りも騒ぐが、男性の場合は「まぁ、うまくやれよ」と諭されるのがオチ。
男児がそうだったように、オトナの男性たちもまたジェンダー・ブラインドのプレッシャーにさらされていました。
(中略)
女性の社会進出が男性の悲鳴につながるとは、なんとも皮肉です。「男だから」弱音を吐かず、長時間労働に耐え、競争社会に翻弄される。
「人は女に生まれるものではない。女になるのだ」とはシモーヌ・ド・ボーヴォワールの有名な言葉ですが、男もまた「男に生まれるのではなく、男になる」。女性たちが「女」を演じきれず「女らしくない」と批判される悔しさを「男」たちも味わっています。
(中略)
男性たちの声にならない声にも気づく、しなやかさを持ってほしいのです。と同時に、男女二分法のジェンダー・ストレオタイプは、性的マイノリティーの人たちの生きづらさをもたらしていることも、忘れないでほしいです。
私が普段、人事の方と一緒にハラスメント研修の企画をしている際にいつも不思議に思うことがあります。
セクハラは男性から女性のみならず、女性から男性、同性同士といった相対性でモノを見る説明が一般的であり、ここに昭和的ステレオタイプな解説に違和感を私は感じています。
最近、特に気になるのが、どのハラスメントのテキストを見ても、セクハラの事例が、男性から女性へのセクハラ行為だけをとりあげて、典型的なセクハラの事例として取り上げられます。
なぜ、同性同士のハラスメント、女性から男性へのハラスメント行為も同列に、取り上げられないのでしょうか?
男性から女性へのハラスメント行為の事例ばかりが取り上げられているテキストの現実に、違和感を感じます。
そろそろ思いきって女性から男性、女性同士、男性同士の生々しいセクハラ事例を取り上げてみてはいかがでしょうか?
私は、仕事柄多くの事例を知っていますので、営業の場でこのような生々しい実話をお伝えすると、皆さん目を丸くして話を聞いてくださいます。
世の中には、本当に色々な会社や組織があります。どうしても同じ会社で長く働いているとその組織の社風や色にどっぶりと染まってしまい、意外と視野が狭い印象です。
だからこそ、自分の会社の文脈では絶対にあり得ないようなセクハラ事例をお伝えすることで自分の中にだけ存在している「ステレオタイプ的なハラスメント事例」を良い意味で壊し、視野を広げて頂くようにしてもらうことで、他者への理解や共感力を高めて欲しいと思うのです。
一人の人間としてから「性的ないじめ、嫌がらせを職場からなくす」というシンプルな本質に立ち返って考えることが求められていると思います。このような本質に再定義し解説することが求められています。
もう男性、女性の切り口でハラスメントを議論する時代は終わろうとしていると感じます。
河合さんの「男女二分法のジェンダー・ストレオタイプは、性的マイノリティーの人たちの生きづらさをもたらしている」
この説明は、まさにハラスメント研修企画担当者として、会社の研修を通じて受講生に問題提起すべき重要な論点だと大変共感しました。研修企画担当者のみなさん、是非、自社のハラスメント研修で「セクハラ」を取り上げるときには、これまで述べてきたような切り口を受講生に問題提起することで、ハラスメントの本質を伝えていただきたいと思います。
文責(藤山晴久)
目次
第1章 なぜ、女性上司は、女性部下に厳しいのか?
第2章 なぜ、女性政治家は失敗するのか?
第3章 なぜ、女はセクハラにノー!と言えないのか?
第4章 なぜ、女は相談にきて怒るのか?
第5章 なぜ、女の会議は長いのか?
第6章 なぜ、女のほうがしぶといのか?
第7章 「ババアってるよ」と笑えるために
引用出典:面倒くさい女たち(中公新書ラクレ)